あなたはキツネについてどれくらい知っていますか? キツネは「コン」とは鳴きません。キツネは賢く、雪原を滑りおり、たましいとなって空を駆けまわります。
言葉を排したストーリー、グラフィックとサウンドで演出される魅力的な世界観に浸りたい人は、北の大地を跳ぶキツネになってみるのはいかがでしょうか。
ただしキツネが嫌いな人、ゲームをサクサク進めたい人は北の大地の厳しい寒さには耐えられません。帰ってください。
この記事では、Spirit of the North(きたのたましい)についてレビューします。
北の大地を駆けるキツネ
- ジャンル:アクションアドベンチャー
- 対応機種:PS4,PS5,Switch,PC
- 発売元:Merge Games
- 開発元:Infuse studio
- 定価:2530円
Spirit of the North(きたのたましい)は、神秘的な北の大地を走り回るキツネが主人公のアクションアドベンチャーゲームです。
本作にはナレーションやダイアログがまったく含まれておらず、独特なゲームプレイが楽しめるのが特徴。北欧のさまざまな言い伝えをもとに作られたストーリーや世界観を読み解くためには、広いフィールドを探索し、残された遺跡や文明の跡から考察する必要があります。
ゲームが始まると、広い雪原にたたずむ平凡なキツネとなったあなたを青く光る精霊キツネが導きます。道々で神秘的な力を得ながら、広大なフィールドを駆け、空を染める謎の赤いオーラの元を目指しましょう。
荒涼とした北の大地で文明の喪失、その元凶、そして自身と仲間について読み解いていけば、目を見張るようなラストシーンにたどり着けるはずです。
サウンドとグラフィックで演出される独特な世界観
本作の最大の魅力は、その独特な世界観にあります。
絵画のようなグラフィックや静かでありながら力強さも感じるサウンドが、言葉を排したストーリーとも相まって唯一無二の世界観を演出しています。
フィールドもかなり広いことから、時には立ち止まり風景を見渡しながら隅々まで探索していくような、ゆっくりとしたゲームプレイが好きな人は特に楽しめるのではないでしょうか。
ストーリーは比較的短くまとまっていますが、物語を深く理解するためには失われた文明の痕跡を調べていく必要があります。じっくりとやりこむほどに楽しみが増す作品だと言えるでしょう。
魅力的な世界観をゆっくりと楽しみたい人におすすめしたいゲームです。
大きな欠点:不自由さと不親切さ
本作の最大の欠点は、操作性が悪い点です。
小さな段差でキツネの移動が阻害されたり、思ったより小回りが利かないなど、細かな操作性が悪いです。離れた場所に飛び移るシーンも多く、悪い操作性のせいで失敗してしまうことも。大抵の場合は引き返してやり直す必要があるため、スムーズなプレイができずにイライラすることもありました。
ゲームの難易度自体は易しめですが、操作性の悪さが気になって最後までプレイできない人も多いのではないでしょうか。
水から出る度にキツネが身震いするモーションを挟む点も気になりました。操作不能な時間が必ず発生するためにフラストレーションが貯まります。
加えて、作品を通して行ったり来たりする場面が多く、ゲーム展開は冗長です。そのため、クリアを目指してサクサク楽しみたい人には合わないかもしれません。
言葉を排しているため仕方がない面もありますが、ストーリー展開で強引さを感じる場面も。この点はバックグラウンドとなっている北欧の言い伝えなどを知っていればたやすく理解できるかもしれませんが、少々不親切だと言えるでしょう。
また、プレイ環境によるのかもしれませんが、メニュー画面からのコンティニューが最新のセーブ地点から始まりません(筆者はPS4版をプレイ)。
そのためチャプター選択から始める必要がありますが、タイトルだけが表示されている時点で決定ボタンを押すとそのままコンティニューで始まってしまうため、かなり不親切です。
大きな欠点が魅力的な世界観を台無しに
長所
- 言語を排したストーリーで考察が広がる
- 大自然の中できつねを操作する独特な世界観
- 魅力あるサウンドやグラフィック
短所
- 操作感が決定的に悪い
- ゲーム展開が冗長
- ストーリーにやや強引さを感じる
総評
やりこみや考察によって深みが増すストーリーや魅力ある世界観を好むプレイヤーもいるのではないでしょうか。しかしその魅力を、操作感の悪さをはじめとした欠点が台無しにしてしまっています。
「操作とゲームプレイ面さえ優れていれば……」そんな言葉も浮かびましたが、その2点はゲームにとってあまりにも大きな欠点なのかもしれません。
荒涼とした北の大地の厳しさを身に染みて感じる作品でした。