TRIANGLE STRATEGY(トライアングルストラテジー)|レビュー

TRIANGLE STRATEGY(トライアングルストラテジー)ネタバレなしレビュー ゲーム

「生きる」とは決断することだ。就職、学校、転職、交際、引越し、結婚……。人生を左右する問いかけに、あなたはどうして答えを出すだろうか。親友の力を借りるのか、恩師の言葉を信じるのか、恋人の手を取るのか、それとも自身の信念にのみ従うのか。

今記事では、魅力ある主人公たちとともに自身の正義と向き合うタクティクスRPG、『TRIANGLE STRATEGY』をレビューする。

なお、ジャンルに関して「シミュレーションRPG(S-RPG)」がより一般的ではあるが、本記事では『トライアングルストラテジー』公式サイトなどにあわせて「タクティクスRPG」と呼称する。

あなたの価値観を反映する「信念」パラメータ

開始画面
スクウェア・エニックスによる完全新作タクティクスRPG

スクウェア・エニックスより2022年3月4日に発売された『トライアングルストラテジー』は、HD-2Dで描かれる重厚なストーリーや歯ごたえのあるバトルが魅力のタクティクスRPGだ。

本作の物語は鉄と塩をめぐる三国の戦いが続いてきた大陸「ノゼリア」を舞台に紡がれる。主人公であるエレノア・ウォルホートはウォルホート家の次期当主として、さまざまな陰謀が交差する戦いに身を投じていく。

本作の特徴のひとつとして、プレイヤーの価値観が物語を分岐させる「信念」システムが挙げられる。プレイヤーの選択や行動は「利益」、「道徳」、「自由」という3種の価値観に分類される。内部的に数値として蓄積された「信念」パラメータによって、物語の展開や仲間となるキャラクターが変化するのだ。

信念パラメータについて
あらゆる選択によりパラメータが上昇する

そして、主人公たちの運命を左右する大きな決断は「信念の天秤」によって決定される。「信念の天秤」とは、登場人物たちの投票によって物語の行く末を決めるシステムだ。

個性ある登場人物たちは各々の論理や感情によって投票を行なうが、かれらに対して説得を試みることもできる。自分の思うように投票を進めてもよいし、キャラクターたちの決定に物語の展開を委ねてもよいだろう。

行く末を決める信念の天秤
「信念の天秤」はウォルホート家の行く末を決める重要なアイテムだ

また、本作はストーリーパート、RPGパート、バトルパートの3つのパートでゲームが進行していく。「信念」パラメータはストーリーパートでの選択はもちろん、RPGパートでの村人との会話や、バトルパートでとる戦略にも影響を受ける。具体的な数値は明示されないため、無意識的な行動も含めたすべての行動が物語を左右する要素となるのだ。

信念パラメータに影響を与える選択肢
ちょっとした選択肢で信念パラメータが上昇することも
RPGパートについて
RPGパートでの行動も信念パラメータに影響を与える

天秤の上で揺れうごく決断

主要人物であるエレノアとフレデリカ
主人公たちには困難な運命が待ち受けている

主人公たちに迫る選択は正解・不正解では計れない困難なものばかり。もちろん、その決断の先にどんな運命が待ち受けるのか知ることはできない。ほとんどのタイミングで選択に迷い、「信念の天秤」の前でプレイヤー自身が逡巡しながら進む道を決めることになるだろう。

筆者もプレイしながら、ゲームの枠組みを超えて、自分の価値観、人生観を試されているようにさえ感じられた。

信念の天秤
ウォルホート家の運命を左右する重要な局面において「信念の天秤」は用いられる

ただ、そのような面白さは、「どれだけ真面目にプレイするか」といったプレイヤーの姿勢に左右されるだろう。ゲームをプレイする姿勢や態度、楽しみ方は人それぞれである。筆者はそこに優劣はないと考えているが、今作『トライアングルストラテジー』の魅力を味わうためには、ある程度の真剣さが必要だろう。

ゲームと言えど、真面目に悩んで決断する人は心揺さぶられるはずだ。逆にゲームだからと、気軽に選択できる人はそこまでストーリーの魅力を味わえないかもしれない。

実際、ストーリー単体のすばらしさというより、ゲームシステムとかみ合って魅力が生まれるシナリオだと感じた。ストーリー自体にはところどころ疑問点やツッコミどころも見受けられたため、先の見えない展開や映画のような感動を求める人には向かないかもしれない。

どれだけキャラクターに感情移入できるかが肝

キャラクターたちが待機する詰所
個性豊かなキャラクターたちが登場する

キャラクターたちにどれだけ感情移入できるかは、ゲームがもたらす感動や面白さを大きく左右する要素だと筆者は考えている。それは『トライアングルストラテジー』のストーリーやシステムでも特に重要視されるべき点なのではないだろうか。

実際に、今作に登場するキャラクターたちはHD-2Dやイラスト、豪華声優陣によって演出されており、とても魅力的だ。

武器鍛錬
各ユニットはレベルのほかに武器鍛錬によって強化できる

しかし、『トライアングルストラテジー』をプレイしながら、キャラクターたちに深く感情移入できたかと言われると、正直なところすこし足りない感覚があった(個人差や好みの領域なのかもしれないが)。

今作はおおむね評判も良く、まちがいなく良作である。しかし、「プレイヤーの心をつかんで離さない傑作」だとまでは言えない。その原因の一つが、「感情移入させる仕組み」が足りない点にあるのではないだろうか。

なぜ感情移入できなかったのか。筆者がたどり着いた答えは、「キャラクターの描写不足」である。

三国の戦乱に生きる主人公たち
三国の戦乱に生きる主人公たち

個人的にタクティクスRPGの傑作として思い浮かぶ作品のひとつに、『ファイアーエムブレム 風花雪月』(以下「風花雪月」)がある。「風花雪月」はシリーズ作、『トライアングルストラテジー』は完全新作である点など、両者が大きく異なるのは確かだ。

お互いに魅力があり、両者を比較するのはナンセンスかもしれないが、「キャラクターへの感情移入」という点においては間違いなく「風花雪月」に分があるだろう。

「風花雪月」は圧倒的なまでのボリュームでキャラクターを描写した。個性的なキャラクターたちにはそれぞれの特徴や性格、過去や目的が細かく設定されており、それらが膨大な量の会話やリアクション、サブクエストなどによって表現されているのだ。(シンプルにストーリーをクリアするだけでもかなりのボリュームがある。)

圧倒的な量の描写が、キャラクターへの感情移入をもたらす。筆者も「風花雪月」プレイ時には、キャラクターたちに待ち受ける運命がつらすぎて何度もプレイを中断してしまったほどである。豊富な描写による感情移入のしやすさが、「風花雪月」が傑作である理由のひとつなのではないだろうか。

その点『トライアングルストラテジー』にも各キャラクターを描写するサブイベントや会話などはあるが、それが豊富だとまでは言えない。

もし各キャラクターの特徴や性格、考え方がより細かく豊富に描写されていたら、かれらの主張や理念がより生き生きとしたものに感じられたのではないだろうか。そうすれば「信念の天秤」による決断の重みもより増しただろうし、キャラクターたちがたどる運命がより輝いて見えたかもしれない。

歯ごたえのあるバトル、魅力ある音楽とボリューム

難易度設定
バトル難易度はいつでも変更できる

システムやストーリー以外の長所についても紹介したい。

歯ごたえのあるバトルは本作の大きな魅力だと言えるだろう。難易度ノーマルでもバトルバランスがちょうどよく、配置や連携などを工夫しながら攻略する過程はシンプルに面白い。

筆者はハードでプレイしたが、タンク役がすぐ撃破されてしまうなど、レベリングなしではとれる戦略が少なく感じたので、個人的には初見プレイ時はノーマルを選択するのがおすすめだ。

ただ、バトルに関しては今作独特の要素があるわけではないので、可もなく不可もなくといった見方もできるかもしれない。

バトルについて
高低差や敵・味方との位置関係も重要な要素
敗北
筆者は初回のバトルからあえなく敗北した

BGMも魅力的だ。オーケストラで収録された楽曲は、重厚なストーリーやキャラクターたちの運命に合っていて、とてもカッコいいものばかり。ただ、個人的には同じくスクエアエニックスが発売している『オクトパストラベラー』の楽曲のほうが印象に残っている。要因はタクティクスRPGとRPGとの特性の違いだろうか。

ボリュームやリプレイ性も十分だと言える。初回プレイでも長時間遊べたが、マルチシナリオや仲間となるキャラクターが変化するシステムも合わせると、遊びつくすにはかなりの時間が必要だ。もちろんクリア後にアンロックされる高難易度バトルや周回要素などもあるので、ハマればじっくりと楽しめる作品なのではないだろうか。

周回要素
周回プレイ時には信念パラメータが可視化されるため、攻略もはかどる
レベリングについて
レベリングは「想定バトル」で行なえる

テンポ感と操作性の悪さ

『トライアングルストラテジー』のわかりやすい短所として、若干のテンポ感の悪さが挙げられる。敵ユニットの行動を待つ時間が生まれるなど、ターン性のバトルはテンポが悪い。最も、この点はタクティクスRPGである以上避けられない短所と言えるかもしれない。

また、テンポ感の悪さはHD-2Dの短所として、ストーリーパートでも表れている。ムービーなどでの描写と異なり、HD-2Dはキャラクターの行動とセリフを並行して表現するのを苦手としている。また、物語を進めるためにその都度シーンを選択する必要がある点でもテンポ感を損なっているように感じた。

そのため、ゲームをサクサク進めたい人はフラストレーションが貯まることがあるかもしれない。

ワールドマップ
ストーリーはイベントを選択することで進んでいく
HD-2Dの短所
HD-2D作品に共通する若干のテンポの悪さ

また、若干ではあるが、バトルパート、RPGパートでの操作性の悪さも気になった。バトルではカメラ角度を自由に変えられるのだが、角度によってタテヨコの操作に混乱してしまうこともしばしば。設定をいじればある程度は改善できるが、終盤でも同じような操作ミスは頻発した。

RPGパートでは、『オクトパストラベラー』でも感じた点ではあるが、HD-2Dならではの表現に慣れるまでは奥行きや段差などに移動を阻害されることがある。慣れれば問題ない程度ではあるため、ほとんど気にならない人もいるかもしれない。

ひさしのようなものに登るエレノア
変なところにも登れる
水飲み場に登るエレノア
水飲み場にも登れる

「自らの正義」と向き合うタクティクスRPG

『トライアングルストラテジー』は、歯ごたえのあるバトルや重厚なストーリーが魅力の良作である。多少の至らなさはあるものの、ひとつのゲームをじっくりプレイしたいプレイヤーは特に満足できるのではないだろうか。

逆にタクティクスRPGに興味がない場合や、サクサクプレイを楽しみたい人には向いていないかもしれない。

Steam版も展開している(出典:https://www.jp.square-enix.com/trianglestrategy/)

生きるとは決断することだ。「利益」「道徳」「自由」。立ちふさがる運命にあなたはどんな価値観で答えを出すだろうか。あなたが何をして、何を話し、何を学び、何を考えるか。意識してもしていなくても、大小の決定の連続が価値観を形作り、人生を左右していく。

ノゼリアの大地に生きる主人公たちと運命を共にすることで、あなた自身の正義と向き合ってみてはいかがだろうか。

長所

  • プレイヤーの価値観が反映されるシステム
  • 困難な決断を迫る重厚なマルチシナリオ
  • 歯ごたえのあるバトル

短所

  • キャラクター描写が豊富でない
  • テンポ感が良くない

総評

歯ごたえのあるバトルや重厚なストーリーを楽しめる良作。価値観や選択が反映されるマルチシナリオが魅力で、ひとたびストーリーやキャラクターの運命にのめり込んでしまえば、プレイヤーの心は大きく揺さぶられるだろう。

タイトルとURLをコピーしました